未来を見据えた挑戦者
福島市の老舗企業、第一温調工業の新社長に本多修一朗が就任した。
金融業界で21年のキャリアを築き、父の跡を継ぐべく家業に飛び込んだ彼は、全く異なる業種でどのように挑戦を続けているのだろうか。
金融から家業へ、転身の決意
社員には「仕事を通じて地元に恩返しをしたい。そのために、お客さんに精一杯対応して頂きたい」と現場に送り出す。
本多修一朗が第一温調工業に加わったのは、父が経営していたこの会社を引き継ぐためだった。
大学卒業後、金融機関に就職。法人コンサルティング部門に所属し、資本政策や地域商社事業、プロジェクトファイナンスなど、多岐にわたる業務に従事していた。その21年間の経験は、数字や計画の緻密さを求められる金融の世界で鍛えられた確かなものだ。
しかし、父の他界を機に心は変わる。「幼い頃から、父が厳しい時代を乗り越えながらこの会社を守り抜いた姿を見てきた」という本多。
父への尊敬と恩返しの思いを胸に、彼は家業への道を選んだ。
課題と向き合う日々
異業種への転身には当然の苦労があった。冷暖房や給排水設備の施工管理を主とする第一温調工業は、金融とは全く違う技術とノウハウが求められる世界。
しかし、彼は課題をひとつひとつ乗り越えていった。
「会社の仲間と課題をディスカッションし、協力して解決することがやりがいです」と語る本多。
その背景には、金融業界で培った論理的思考力と、地元企業の課題を解決してきた経験が活かされているのだろう。
さらに、子供の頃から父の傍らで会社のスタッフと交流し、「仲間と力を合わせて困難を乗り越える姿」を見て育った彼には、チームで課題に立ち向かう精神が自然と根付いている。
「地域ナンバーワン企業」を目指して
本多は新しい第一温調工業の未来像を描いている。そのビジョンの柱は「地域ナンバーワン企業」という目標だ。
「地域で最も信頼され、最も挑戦し、最も成長する企業」になることを掲げる。
本多が強調するのは、「社員を人財として大切にする」企業文化だ。
資格取得や研修制度を充実させ、一人ひとりが成長できる環境を整備する。さらに、会社を「自分の子どもや孫にも勤めさせたい企業」にすることを目標に掲げるなど、長期的な視点を持つ。
「創業100年を目指し、皆が夢と希望をもって働ける会社にしたい」という言葉からも、その覚悟がうかがえる。
地域とともに歩む未来
創業57年目を迎えた第一温調工業。
官公庁や医療機関など地域の大規模施設を支える技術を、次世代へと受け継ぎながら、DX(デジタルトランスフォーメーション)化や新たな取り組みにも挑戦している。
「地域に根ざし、必要とされる企業であり続けたい」という本多の想いは、社員だけでなく地域全体にも向けられている。
本多修一朗が描くのは、ただの経営改革ではない。
父が築いた「信頼」と「挑戦」の精神を受け継ぎながら、地域の未来を見据えた新たな挑戦だ。
彼の物語は、第一温調工業がこれから迎える100年への第一歩を象徴している。
信頼され、挑戦し、そして地域で一番働きやすい企業へ──。
その歩みは、地域とともに輝かしい未来をつくり出すだろう。